ポエム
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体の玄関
はい、では耳を見せてくださいね
モゾモゾ、ゴソゴソ
ソワソワ

先生は実に近い距離で耳の穴を見ています。
冷たい器具を私の耳の穴に入れて何かを見ています。
先生が見ている。
私が見られないところまで見ている。先生、今私がどんな気持ちでいるかわかってくれますか?

脳みそをこじ開けても耳の中に先生の目玉が入っても何にも見えやしない。
私、痛くて、痛くて。だから先生のところに来たんです。
何が痛いのかわからなくて、怖いんです。先生。

はい、いいですよ。
先生は生暖かくなった器具を耳から抜いてしまった。

なんでもっと、まだ何にも見ていないでしょ?
どうしてそんなに無関心なのですか?
もっと目を凝らせば新しい病気が見つかるかもしれないのに。
全部見てください。先生が私の耳の穴から体内に潜って、すべての器官、臓器、細胞に聞いて回ってください。
私のどこが痛むのか見つけてください。
耳の穴からどうぞお上がりください。
今日からここが先生の家ですよ。家賃はとりませんから。好きなだけいていいんですよ。
23/09/10 18:35更新 / ささきキヌ



談話室



■作者メッセージ
むかしから検診で耳の穴を見る検査が好きでした

人に耳かきをしてもらったことはほとんどありません

むかし友達に耳かきをしました

その時痛がらせてしまいました

自分以外を傷つけるのはとても辛いことだと思いました

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