ポエム
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蘇生術
お友達の作り方

隣にいます。
今、蘇生しますから、そう焦らないでください。
こういうのには時間がかかるんです。
えぇ、はい。ですから時間をかけたらいいんですよ。
隣にクマのぬいぐるみがあります。


ふわふわのボアの肌です。まずはこの子にお友達になってもらいますよ。
そしたら挨拶をしてみましょう。
なぁに、そんなに緊張しなくてもいいんです。子供の頃からのお友達だと思って。君が今までずぅっと大事にしてきたお友達ですよ。
挨拶が終わったら親交を深めましょう。そっと体全体を包んでみてください。
え?いつまでこうしていればいいって?
あぁごめんごめん、君がしているそれが蘇生術なんですよ。
だからそうして自分の体温をそのお友達に分けてあげたらいいんですよ。

コツがあります。
気持ちを込めることです。なんでもいいですができるだけ柔らかい気持ちがいいです。ボアとの相性がいいので蘇生がうまくいきます。
心に集中してください。なんでもいいですよ。心の中で話しかけてあげてみて。

ボアの肌が少しづつ私の肌と同じ体温になっていく。カーテンから漏れる青い月光が手術台を優しく照らしているのが瞼越しにわかります。
寂しいです。私はずっと一人ぼっち。誰も誰も私とは違くて。でも今までこうしてあなたがいてくれたから私はここにいるんですよ。だから今から蘇生してあげますから。そしたらずっと二人でいましょう。私たちふたりだけお友達。何もしなくていいんです。言葉がなくてもこうしてお互いに優しい気持ちだけでお話ししていたら楽しくて嬉しくてあったかい泪が。なみだ。心が熱くなって溢れて体から溢れて。やっと生きれる。

 
23/09/09 16:08更新 / ささきキヌ



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