ポエム
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宵闇に咲くひとしずく
風がそっと髪をほどく駅前の路地で
君と別れたあの日の影が揺らめく

ビルとビルの間に霞む月明かり
擦れ違う誰かの声が僕を追い越していく

小さな公園のベンチに腰を下ろし
枯れた花壇には散らばる花びら
咲き誇った季節の名残は
足元の砂に紛れて消えていく

「またね」と君が手を振った瞬間を
何度も思い出そうとしては
宵闇に浮かぶ残像に問いかける
あの日の言葉
どこで間違えたのだろう


夜の静けさに包まれた住宅街
窓の向こうで響くテレビの音
灯る明かりひとつひとつが
どこかで同じ孤独を抱えているようで

息を吸うたび
胸の奥に残る痛みが
今日も僕を目覚めさせてくれる
君を知って初めて知ったこの痛みが
今の僕を形作っているのだと気づいた


宵闇に咲くひとしずくは
消えることなくこの胸に咲き続けている
そのしずくは涙なのか希望なのか
いまだ答えは見つからないけれど
25/04/08 18:33更新 / 那須茄子



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