ポエム
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ひずみ
あの日
私が生まれたのは
あなたに出会うためだったのだろうか

冷たい夜を超えてきた心が
初めて温もりに触れた瞬間だった


でも
その温もりに触れるたび
胸の奥に静かに降り積もる影がある
幸せの形を描くほどに
その終わりの輪郭もまた浮かび上がる


もしも私が透明な空気だったら
誰かの息を奪うことなく
ただそっと存在するだけでよかったのに

それでもあなたの隣には立てなかっただろうか


あなたが微笑むたびに
その笑顔の奥に隠れた影を探してしまう
私の思いなんて届かなくていい
そう言い聞かせながら
ただあなたの幸せを願っていた

それでもそれでも
なぜ心はこんなにも叫ぶのだろう

何度夢を見ても
触れられない
その距離にまた苦しむばかり


消えていく時間が私たちを遠ざける
あなたを守れない無力さが胸を締め付ける
けれど願うのはただ一つ
次の瞬間もあなたの笑顔が続いていること


この手が触れることはなくてもいい
25/03/14 14:41更新 / 那須茄子



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