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痛みと老い
ある老人が右足親指が痛いと言い出した。
それは日に日に寒くなるほど酷くなり、
老人はついに病院に行った。

外科医は言った。
「調度良い薬がありますよ」と。

老人は親指が痛むなか、
治ることを信じていた。

しかし、いっこうに治らず痛みは増すばかり。

外科医から整形外科医に移り話を聞くと、
「その薬は麻薬のようなもので使ってはいけない。
使うならこの薬を痛みを我慢して1ヶ月飲みなさい」
そう言われた。

しかし、いっこうに治らず痛みは増すばかり。

我慢できず病院を変えて神経内科を受診した。
神経内科医は言った。
「体は正常です。老化でしょう」と。

老人には「老化でしょう」という言葉が何より辛い。
薬を無理にでも出してもらった。

しかし、いっこうに治らず痛みは増すばかり。

心が折れて精神科に行った。精神科医は言った。
「目に見えない痛みは医者にもわからないのだ」と。

ついに力尽きた老人は、
寒い寒い冬の夜に救急車で運ばれて行った。

ペインクリニックの医師が残酷な病名を告げた。
それは血管外科医の領分だが老人は苛酷に耐えた。

春、右足親指は改善してゆき、
今では痛みを口にしない。


痛み、その見えないもの。
老い、諦めのはじめのもの。
19/01/01 23:35更新 / pomupomu



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