ポエム
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空っぽな僕は詩を書いている
僕にものを教えた人がいた
その人は先生と呼ばれていた
僕はその人と向かい合って
次第に何も感じなくなった

僕を導いた人がいた
その人は彼女を導いていた
僕はそれを横で見て
勝手に「導かれた」とそう思った

僕は彼女が好きだった
いつだって違う、彼女が好きだった
僕はずっとふわふわした所にいた
彼女はいつも傷だらけだった

僕が先生と呼んだ人がいた
その人は名前を持たなかった
僕達は白い部屋で向かい合い
僕の空っぽを、2年かけて証明した

例えば、あの日の空が
真っ赤に輝いていたら
僕の心は
その時、揺れ動いただろうか

その時、彼女が隣りに居て
僕だけのために微笑んでくれたら
僕の心は
その時、同じに微笑んだだろうか

例えば、あの日の手紙に
先生の涙が流れていたら
僕の身体は
その時、崩れ落ちただろうか

その時、僕の真っ黒な左手が
この壁紙を染め上げて
それから
破り捨てることはできただろうか

ここに
今、ここに
剥がれそうな顔と
離れそうな心がある

この声は
いつもどこか遠くから聞こえてきて
この胸を震えさせることもない

今はただ、何もかも虚しい
20/11/17 01:59更新 / アンタレス



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■作者メッセージ
空っぽな昔話です

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