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急に怖くなった
急に怖くなった
どうしてなのかは解らない
でも、ただひとつ分かるのは
天上に広がる、星空のこと

たまに星が見たくなる。今日もそうだった
「あの輝きは何万年も昔のもの」
教えてくれた人は忘れたけれど
その言葉だけは覚えているんだ


急に怖くなった
どうしてなのかは解らない
でも、ただひとつ分かるのは
ここは電車の中で、つり革がべたべたすること

毎日同じ時間のはずなのに、
誰一人顔を覚えている人がいない
もちろん話したことだってない
話しかけようと思った事は、少しだけある

急に怖くなった
どうしてなのかは解らない
でも、ただひとつ分かるのは
思い出していたこと
あなたを好きになった日のことを

それはありふれた動画サイトで
包み込む優しい声に、一瞬で恋におちた
古いものから順番に聞いて行った
最新の投稿は、2ヶ月前だった

急に怖くなった
こうして急に怖くなることが、ときどきある
それがもう、ちょっと怖いんだ
怖がりなのに、生きているんだ

誰もいない部屋で声を出してみたり
発作的に辛いものを食べてみたり
誰かに優しくしなければと思ったり
布団の中で丸くなったまま朝になったり

全部怖いからだ
誰かが、
「急に怖くなる魔法」を使うからだ
誰かに届くことは、同時に
いつか消えてしまうことの証明だから

誰かここに来てくれないかな
そして、一緒にどこかに行こうよ
二人だけでいい、他には何もいらない
今この時だけでいい、明日はいらない
手を繋ぎましょう、離れないように

「忘れないで」と私は言うから
「忘れないよ」とあなたは応えて
19/08/05 01:50更新 / アンタレス



談話室



■作者メッセージ
急に怖くなった
どうしてなのかは解らない
でも、ただひとつ分かるのは
最近「怖くなくなる魔法」を
使えるようになったこと

2017/6/19

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