食む
ざらり、舌に絡みつく甘さが気持ち悪い。
さっきまで冷蔵庫に入っていた冷たさが指に伝わる。
人工的に作られた色彩が彩度を激しく変化させる。
それをただじっと見つめていた。
口端が汚れるのも気にせず押しつけて飲み込む。
甘ったるい粘度を口の中に広げる。
温度で溶ける柔らかさを、かむことなく消していく。
舌でじっと転がして唾液が混じった。
温度の分からないそれを次につかむ。
かさかさと個包装が音を立てて机に落ちる。
くしゃり、何の気なしに手のひらでつかんで、放す。
汗と温度で溶けた塩分がべたべたと指先を汚した。
小さく割って、放り入れる。
際立った塩味が舌を痺れさせる。
歯で噛んで、口内で割る。
骨を通じて響く音をどこか遠くに聞いていた。
食べ飽きることがない。
住人の消えた袋と紙箱は減らない。
人の物はもらえない。
それを、ただじっと、見つめていた。