こぼれる
ドアを引く。
足を踏み入れる。
とぽん、
じわり。
水の中にいる。
構わない。足を進める。
今日は海でも見てるのかな。
お話にでてくるような可愛らしい海の生き物たち。
触れるようでさわれない。ゆめうつつとはこのことか。
ベットから少しだけ浮いてる君。呼吸をするたびにゆったりと水が揺れる。
まだ、起きないの?
声をかけても、長い睫毛で縁どられたそれはうごかない。
おれも、ねむたくなってきた。
揺れる感覚に身を委ね、名も知らぬ小魚に囲まれたまま意識を放り出す。
ゆらゆら、
ふわふわ、
彼の夢の中で眠る。
気が付いたら、生活感のない殺風景な室内がぽつり。
彼も、眠気眼をこすりながらおれをそっと眺めていた。
いつ、起きてるの?
いつもおれが来たら寝てるのに、いつもおれが起きる前に起きてる。
夢が終わったら、起きてるよ
起きたら夢が終わるのに、まるで順番があべこべ。
こいつの夢はあふれて消えちゃう。自分の夢なのに、自分では見えない夢を見る。
へんなやつ。
おかしな頭の中。
まかふしぎ。
おれも。
きっとおれもへんなやつ。
へんなやつ同士、あべこべ、さかさま。
とりあえず、おはよう。