家族はありません
友達もありません
思い浮かぶのは制服のネクタイだけ

手のひらがあたたかいの
いつも脅してくるベージュの壁や木目のクローゼット
今日は安らぎをくれた

ブルーシートに覆われた家族の幻影
みんなが教えてくれた 可哀想ということば
汚かった いらなかった
冷たい砂に囲まれてただ生きる

粘土でできたがらくたの慰め
シュレッダーにかけた あの人の写真と手紙
私を見て泣いた あの人はただ自分だけが大事だった

頭から出られない悲鳴
うちやぶろうとするわたしの手
役たたずな日付
役たたずな声
靴も履けず 永遠と引っ張るひも

家族はありません
友達もありません
思い浮かぶのは制服のネクタイだけ