卒業のうた
静かにいなくなりたいのだと言葉にできたのは3年経って最後の日でした。身分や肩書に囚われていた私は今日死にます。そうして生まれ変わったら聞こえのいい自由に、あるいは理不尽になります。誰もいない教室で、白い床が反射している。黒枠の窓から見える全面の空は門出を祝うようで、飛び立てない私を高く高く見下ろしていました。恥の多い生涯でした、なんて言う気はないけれど、才能と隣合わせで生きていった3年は自分を顧みることが多かったよ。こんなにもちっぽけで、どうしようもなかった。誰からの記憶からも忘れ去られて、私だけ、過ごした思い出を繭の中に閉じ込めて生きていきたい。静かにいなくなりたいのだとこぼす言葉は、誰もいない晴れた教室に尊く響く。