優しさのうた
誰かの優しさはぎゅっと筆箱に詰められている。開いても、取り出さない限り変わることない真夜中でした、星なんて、街頭なんて、所詮は眠ったときに見る現実なのかもね。落下していけば無理にでも見えるけど、それは偽物だよ、騙されてはダメだ。空っぽの布切れで、あるいは革で、あるいは箱は、何の役に立つのかな。息を止めるときに使うんだよ。
氷水を出していた足元。排水溝が息をしなくなってから数日間、そこはネオンが落ちる墓場だった。死人がもし、悔い改めるなら、生きていたことを悔やむんだろうな。ここでは何人も死んでいるから、筆箱に詰め込まれてしまう、混ぜられた濁流と共にチャックは閉められる。それを、ただただ後悔として見届けてしまうぼくらの名前。