生まれゆくうた
優しくてふわふわで、包まれているような胎内より。
ハローハロー、お元気ですか?漂う小舟のなか、疲れてはいませんか?わたしは疲れています。人の減らない電車のなかをガタン、ゴトン、ガタン、ゴトン、揺られ揺られて帰路についています。この時間は真っ暗ですね、生命の明かりがぽつり、ぽつり、星の光がきらり、きらり、それでも黒ペンキの中にいるみたいです。そちらはどうですか?今、水の中から聞いている私の声は、聞こえていますか?聞こえているなら、お返事を。
ハローハロー、お元気ですか?それなら何よりですが、わたし、貴方に苦情を言いたいのです。ゲシッ、バシッ、ゲシッ、バシッ、何度も叩かれるわたしはとても痛いのです。やめてくれとは言わないけれど、けれどキスをしている間はやめてください。歯がガツン、ガツンと当たってしまうのです。前歯が泣いています、唾液だなんて指摘は無粋ですよ。わかったなら、お返事を。
優しくてふわふわで、包まれているような胎内へ。
生まれてくる、あなたへ。