遠いうた
向かい風がわたしの脚に絡んで、やむを得ない事情が足枷で、従いたくない常識が膝を折り曲げるから、どうしたって前しか歩けない、わたしら。朝御飯なんて食べるものじゃない、身体の奥底に、重りのように、鉛のように。この場所に固定されて、釘を刺されて、けれど、いつも、這いつくばって、血をながして、前に歩くことしかできない。後ろを向いてもただ空虚で、へそを曲げて凹んだわたしが、今、じっと、わたしを見ている、じっと。それをわたしは、過去と形容するのでしょう。
魂が21グラムだとだれかが言いました、そうかも、棺桶に沈む花嫁を重いと思ったことはないもの。自由になって、鳥籠から羽ばたいたそれは、けれどどこにかえるのだろう、どこにいけるのだろう。灰の空を通り、雲を突き抜けオゾンも越えて、悲しいくらいに限定的なわたしらの想像。祈りは弱きがするものだから、わたしは脚を引き摺り願っている、わたしの、在処。