恋を知らないうた
想像は回避だと、小さい頃思いました。
例えば、今日自分が事故に遭って死んでしまうと想像してみます。でも想像は予測なので、突然に、とか予想外の、とかそんなのなくて、本当に事故に遭ったなら未来予知になるんです。予防線のようなものです。
だからわたしは何度も想像します、性の差を実感する瞬間を。有り得るかもしれない未来を想像して、有り得ない未来に棄ててしまう。恋を知らないまま生きてきて、多少の不便はあったけど、でも、それでも良いやと思えるわたしに出会えました。
けれど霞の向こうにあるしあわせの故郷を、一度は見てみたいと思います。そうなるときは、多分想像が死んだときなのでしょう。世界への興味も失せて、現実に押し潰されて、今のわたしが死んだときにやってくるのでしょう。しあわせの故郷は、わたしの死によって訪れる怪物なのだから。けれど自決の勇気もなくて、想像を繰り返してしまう、恋を。