海を見るうた
化石の上を歩いて歩いて躓いて、ようやく触れ合えましたね、お母さん。祝福の声を上げる白黒の天使が彼方に見えます。ラッパの圧が、風となって髪を乱します。母も怒って強くぼくに当たります。今日が晴れて良かった、暑くて良かった、蒼と青がきれいで良かった、見上げたときに見たあおいろを、空だと認識できなくて本当に良かった。
にせものをずっと見てきたので、ほんとうを見つめると、どうしてか涙がぽろりぽろりこぼれて。さよなら、というのもおこがましい、音にまぎれて、そして岩とおなじになりたかった。どうして人間は、エラ呼吸ではないんだろう。さびしいと感じて、どうしても、かえりたいと呟いてしまう。母を前にしてなにができるわけでもないのに、染めた髪を揺らして、じゃあね、またね、なんて言ってみる。ぶく、ぶくぶく。手を繋いで、防波堤を下って、さよならお母さん。またね、海。