朝思い出す夢のうた
焼けたいろが綺麗な朝でした。焦がしアップルパイをぎゅっと敷き詰めて、おはよう、今日もいいお天気ね。鳥のせせらぎが今も穏やかに。せめて、せめてそんな夢だけは見させてください。
焼けたいろが綺麗な朝でした。焦げた人の思考や顔をぎゅっと敷き詰めて、さよなら、今日が君の命日なの。烏のような鳥がこちらを見て。せめて、せめてそんな夢だけは見せてくれないで。
焼けたいろがどこにもない朝でした。用意されていない朝食と、早く起きて、けたたましいアラームが怒鳴っている。時計が急かすように。そうね、靴を履いて急ぎ足で出掛けましょうか。
代わり映えしないでしょう。ぼくはそれでいいとすら思っている。豪勢な食事も、凄惨な終わりも、夢であったとき夢じゃありませんようにと願ってしまう。欠落だらけの日常、詰め込まれる箱庭、嫌悪と歓喜が両立する場所。食す小さな命に気付いてしまったとき、内臓が圧死してしまうような悲しみも、全部、全部白昼夢だ。平坦で良いんです、ぼくは。平和も争いも望んでいません。バイバイ、胎内。生まれた息苦しさを感じて、濁流が起きて、ぼくの顔は洗い直される。