海の青を望むうた 前
天国と地獄と現世を救った人はなんと呼ばれるのでしょう。とんと検討もつかなくて唸った夏の午後。クーラーが効いた部屋は外への関心を蝕んでいく。ふと、なけなしの興味は故郷を想起して、帰りたいと、きみみたいだと笑ってしまう。見つめていい?ブルーサファイアの瞳。どこまでも広いぼくらの故郷が、青の瞳が、海を想っていた。
だから、三界をゆるしたぼくは名前のないなにかになって、眩い光の電源が落ちる。もう二度とつかない灯りは、あの夏の午後を葬り去っていくのでしょう。輪の住人が離れて、放れて、すべてが亡かったことにされる。ユートピア。洪水が起きて、方舟に乗ったきみが初めて生きたいと叫んで、ようやくきみも笑えたね、と綺麗でもない笑顔が零れ出た。時間だ。ねえ、最後のお願いを、耳を貸して。五日、ぼくは忘れてしまうから、
「いつか、海で会いましょう」。