死んで花実が咲くものか
生きているうちが花なのよ
と歌謡曲か浪花節

あいつも死んだ
こいつも死んだ
と
この半年で親友が四人も亡くなり
おれだけが生き残る
みんな古稀を過ぎて
ようやく孫相手にこれからというときに
あいつの連れあいさんは言ったよ
仕事も退職してこれから二人で
旅行もしましょうねと
話していた矢先に亡くなると
働いて働いて
燃え尽きてお終いは
あまりにもみじめじゃないか

あいつもこいつも
みんな津軽の桜を見ないで死んだ
花の咲く前に残雪を目にして死んだ
あまりじゃないか

いま
自分は花壇の中のベンチに座り
そこから見えるツツジと藤とパンジーと
春繚乱の花盛りの極楽浄土にいた
あの世はどうなのか
この世も春はこんなに綺麗だ
なあ
おまえたちも
あの世で花畑に囲まれているのか

ほんとうはあの世もこの世もないよ
みんな地獄極楽この世のもので
残された自分だけが花に囲まれて
青空と太陽と風に
全身をまかせ
生きて深呼吸をしているよ