ポエム
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古代ギリシャの風景
“一眼の人”  −徳山が生んだ林忠彦氏にー
     平尾直久


見るためにあなたは見ない
感じるために
あなたは見る 

あなたは感じるために
忙しそうに飛びはねて
それはまるでテニスの試合のよう
独特なカメラ・アイ
暗い印画紙
暗室から蘇った美しい風景写真

あなたは突き放す
モデルの肉体を
主観と客観を閉じこめる印画紙に
オブジェは追い詰められ
映像は切り取られた

あなたは一眼の目を持つ
あなたは一瞬の目を持つ
あなたは一角獣の角を持つ

双眼のすめる子ら以上の優秀な目を

あなたは触れることの出来ない女を
心の中でしかんし
その女の魅力がどこにあるのかを探す

男と女のたわむれの中で
女は自分の魅力は笑顔だと知っていた



“一瞬の動きに生命をかける”

酒場ルパンで
太宰治の軍隊靴は
今も蘇る私の心像に

あなたのカメラ・アイは
この時.この一瞬に不動のものとなった

僕のスカルラッティ

女王マリア・バルバラの機知と
憂しゅうが交錯する洗練された世界
スカルラッティの女王への献身と忠誠 

男性特有の陽気な笑い
一抹の悲劇的な情感
優美で雅な宮廷趣味
瞑想的なメランコリーを打ち破って情熱的なオペラ劇
自由なファンタジーと多彩な表情
スペインのフラメンコの情熱

聖ペテロ大聖堂の楽長から運命のいたずらで
イベリア半島に都落ちしたスカルラッティの諦観と憂愁

ホロビッツの弾くスカルラッティには
スリルに富んだ新しい再創造がある
驚異的に冴えた技巧がある
水晶のようなピアノ美の極み
ベェルサイユ宮の鏡の間の世界

鍵盤の上の音詩人
限りなく美しいロココの世界
僕のスカルラッティ
を女王マリア・バルバラのために作曲し近代クラビア奏法の父
と言われた。
(注 ドメニマリアコ・スカルラッティ:
1685年――1757年 イタリアの作曲家・新しい書法のロココ風のチェンバロ曲)

(注 ウラディミール・ホロビッツ:
1904年 ロシア生まれのアメリカのピアニスト・完全な技巧と豊かな
抒情性を持つ今世紀最大のピアニストの一人。)


たとえば君は----------------。
たとえば君は青春
僕は「時」の道化ではなく情熱の吐息

たとえば君は春の光
僕はだくようにあびたい

たとえば君は夏の朝
僕はいつまでも君と一緒に散歩したい

たとえば君は秋に咲く馥郁たるバラ
僕はいつも香水のように付けたい

たとえば君は冬の嵐
僕はアラスカまで追いかけて行こう

たとえば君は美しく前に立ちはだかるスフィンクス
僕は男と女の謎解きに夢中になる

たとえば君は舞台
僕は君のまわりで恋人役になりたい

たとえば君は遊園地の観覧車と
僕はいつでも回って君を眺めたい

たとえば君は便箋
僕は青いインクで愛していると三回書きたい

たとえば君は母なる大地
僕は小さな雨垂れとなって君のもとに溶けいろう

たとえば君は悪魔
僕はスト−ンズの「悪魔をあわれむ歌」を歌ってあげよう

たとえば君はサファイア
僕は大人の落ち着いた輝きを贈ろう

たとえば君はこれで終わり
僕は君の最初で最後の恋人になろう

 
“半分のグレーフフルーツ”

僕の方が先に目覚めた
君は長い髪の毛をベッドに流している

白いシーツは朝を呼ぶ
シーツに包まれた君は
美人画に出てくるようだ

七階に受けた光は
ぼくを目覚めさせてくれた

ベッドから出て
都会ならではの静かな日曜日の朝をむかえる

日曜の朝におもいは自由に遊ぶ
君と行くピクニックへ
君と行くファンタジーへ

窓から見る風景は
平日のように車が通る忙しく走らない

スプーンを取り出して冷蔵庫を開け
グレープフルーツを半分食べよう

残りの半分はまだ眠っている
君の分
 
“銀河系”

魂が重くたれこめる時
内省的に心の内側を探る時
思索は宇宙をめぐり
神々の存在を知る 心の裏側を知る

宇宙といや銀河系と一体になる
なるということはどういうことなのだ
宇宙の運行と一体になるということか

人と精神は遥か暗黒のはてまでおよぶ
神いや人の精神がおそれを生む時
人々は何かに跪く
人々は跪く時迷妄となる 危険となる
精神より頭をさげることを知る

精神よ 人の精神はそれほどのものなのだ
明晰を愛する人となれ
科学を愛する人となれ
二十一世紀をむかえる人となれ

ああ存在よ 宇宙よ 意志よ
人の魂 おのれの魂 宇宙の運行
自然の運行を知る人となれ
自分の意志をはっきりと知る人となれ

曖昧とおしになるな
精神を飛翔する人となれ
暗黒にいるデイモンも
それを望んでいる

天国にいるエンゼルも一緒に君の味方だ
人類よ
君の希望よ 君の情熱よ
暗黒から光のさしている昼間を愛せ

欲望のとりこになるな
君の魂にきっと光がさしてくる
 
“イノセンス”

巧みにまた微妙に甘美な科学が統治する現代
文明の暗き森の都
刃物の戦争はさりロボットコンピューターの時代が来た
閉じ込められた疼く河から流れ出る狭歪な
粘膜の液 開放された情報の海へ流れ出る映像


台風七号はもう少しで種子島沖に上陸する
私たちは長い碇泊港を後にする
どんな冒険も新たな始まり 風速四十mの涙に向かって
開かれて行く意志の涙

痙攣する錆びた肉体 拒まれたエロティックな動き
撃たれた菩提樹の枝 略奪された都市
永遠が時の作り出すものと愛し合おうとも
君の百合が光を浴びて花咲く若さのように
大地の底に横たわる水脈 やわらかい身体
心象の扉を開けよう 切り抜いた時間のへりを覗く鏡

遠ざかる空間 場所に閉ざされた肉体を
静かな夢のまどろみに閃光が炸裂する
深い瞳の中の無感動な墳墓も割れる

あらゆるものに微笑みを 心の描いた情景を悲しみの調べ
引き潮の吼えるように巨大な組織の無力
新たな私の心象へ深く愛する者こそ
真の遺産 無垢な光がただ存在している
原世界に

 
“サキソフォンの悲鳴”

夜汽車が暗闇の中を速い獲物のように突っ走って行く
獰猛でプロフィールの美しい
男は都会に吠える 政治に吠える

均整のとれた美しい女は
青白くネオンに輝く
肉眼では捉えられない速さで何かが蠢いている

摩天楼は詩的にかたむき
マッチ箱のようになる 
サキソフォンの悲鳴がラジオから聴こえる

現代の都会育ちの少女は愛すれば愛するほど
愛の広がりを小さな胸に感じている

カクテルの中のさくらんぼが
哀愁を織り交ぜたように醸し出す
少女は愛について深く考え
愛は育てるものだと知る
愛はもだえ息づいているものだと知る

一つの梨は過去に悲しい荒野にさすらい
二つめの梨は今日に精一杯もられ
三つめの梨は何かに追われ未来の汗を呼ぶ

少女は別れ際に大粒の涙をポロポロ流す
プ−ルサイドで見つけた恋に別れを告げる

摩天楼にある52階のバーのフロアでは
男女がけだるく踊っている


群青は青が集まって出来ている

青年の青はブルー 曇天の空は灰色
摩利支天の輝きと信仰人生は青から始まる
歴史は夜に作られ 熱中は熱中を生む
脱化石燃料への強い変換 静は青に争うと書く
金と銀の色模様 青から蒼い衝動が生まれる
青は光 蒼は影 インフィニティな青 
青はエビデンス 青は流れ星 気候変動の負のスパイラル

光ファイバーは青色だ 半導体は 無機質だ
プロジェクションマッピングは先代の支配を得る
次世代に伝えたいごきは光の集り
白波は遠く視界が見えない 虹は七色 地球は青かった

XRから複合現実へ ネットフリックスからの誘い
巴水のブルーは特別な青 潸然と美術史に輝く
近江牛のサーロインステーキに満足だ

麻雀の東風は青龍という
生成のAIコンピューターはアルゴリズム(計算手順)
仮想通貨はデジタルが反転

デジタル資本主義は白紙の未来
JFK国際空港よりジェット機で飛び立つ

白馬の王子様は白雪姫にキスして白いため息
翼が欲しい 青いひだまり急上昇

へ−ゲルと弁証法的唯物論
哲学には唯物論は不可能だとへ−ゲルは言っているが
レイニンはこれを曲げて弁証法的唯物論としたわけがあ
弁証法的唯物論はレイニンが作ったとも言える
それは搾取だ 革命が必要だ
レイニンは弁証法的唯物論を展開していった
生産手段を保持している資本家とこれを持たない労働者が生まれ

社会主義において搾取と疎外された労働は
絶対的な悪であり社会主義の二大要素である
ロシアにおいてこの主義は成功し長く続いた
しかし自由主義を旗印に社会主義は打ち破られた
レニングラード中心部に有った革命の指導者
巨大なレイニン像は押し倒され
社会主義と弁証法的唯物論は終焉した


愚かな観念論 愚かな唯物論
賢明な観念論 賢明な唯物論
弁証法的唯物論

白い船

君は朝に 白い船
君は まどろみの中に眠っている
朝日は露に濡れて輝くばかり

昨日の僕との事は忘れて


君は今 白い船
君は今 白いサンゴ礁
君は今 白い海

僕はテノール歌手で名曲を唄い
君にすべてを捧げ
愛の旋律を奏でた
君は拍手に答え陽気だった
君は夢に見た青い妖精

君は朝に息ずいている
朝はやさしく微笑んでいる
昨夜のことはうそのように
赤い唇が絡んだのを忘れて

君は今 白い船
君は今 白いサンゴ礁
君は今 白い海

朝の光がベッドに来る
静かな眠り
夢と香りの中に包まれて
君は夕に眠る白い妖精

僕の足音で君が眼を覚まさぬように
僕は自分自身に別れを告げて船出しよう
僕と君の金と銀の
涙で揺れ動く夢を消さないためにも


祝福の日

オリ−ブの光沢に似たきだかい額
延び延びとした均整のとれた肢体
君の存在自体が天上的なもの
この世には稀なもの
この現世では甘く清らかな至上の魂
君の肌は大理石のように輝く白い波

君の上品な色香はその場を華やかな社交場にする
人々は君の美しさを認めている
君の赤き唇 白く細い指 鹿のような足
聖母の海のような愛

白い百合の花びらが金色の雄芯を抱くように
包み愛の渕に誘う
緑の丘へ安らぎを求めて 満ち足りた時を求めて
私の荒れて貧しい魂は和らぐであろう
自分の情熱も至高の歓喜に変わる時が来る
ああ芽生えたばかりの気持ちが波打っている
 
私の愛と君の愛が結ばれ
君は美しい森の精 昔ぶなの木の木陰から
そっと君を眺めていた
女王なる月が今君の存在と同じように
太陽となる 私の気持ちを君に捧げよう
何かの障害や抵抗は二人の愛を
蹄鉄に変えていく


祝福の日2

離ればなれになって疲れ果てて揺れ

愛の日々 追憶という荷物が足枷のように
ひかれて動かなくなった日々
南の微風が二人を結びつけるリボンのように
この愛は運命なのだ
翼を持つ都会の恋は青銅に変わる不変という
文字を刻み付けて
私は持って来たのだ君に贈る指環を
貞淑にして淫靡な 純血にして奔放な
君へ
情熱な花火が花輪に変わり 

横笛が静かに水のように流れる
祝福の
白鳩が飛び立ち新しい門出を迎える

大勢の若やいだ合唱が
二人の愛に何よりも答えてくれる

こうして青春の生命の限り尽くした日々は
結ばれる 魂から君の身体へやがて
やさしい心へ
花嫁という君は新床の安らいだ眠りが
とても好きなようだ
心まかせに愛し合い暮らそう
老いても二人は友情で結ばれていよう
多数の祝福に答えるように

明日は雪
交通障害や路面凍結に注意
しんしんと雪は降る
首都圏は一夜にして雪国

春の雪で総武線は停止
一面白銀の世界

カ−リング女子の世界戦
対スコットランド7対2で敗れる
土地は予定していた雪化粧
街はゆっくりと動き始める

神社の参道に雪がつもり
その足跡だけが残っている
夢のかけらがきらきら雪のように光る
純白の涙が雪の上に落ちる

プラチナの月明かりが雪の舗道を
照りつける 明日は雪


有翼人


アポリネールの丘

朝日がさすアポネールの丘へ
白い雲が出る丘へ
キプロスを護るように定められている
豊穣の丘 霞に包まれた時間 ゆっくりした
楕円の野原

パピルスに書かれた文字を読む
小さな言葉にくちずけする
蘆の笛がなる欧州の風に
透き通るような青空に
はかない時が永遠を刻む丘へ

小川のほとりや暑い夏の日を歌った
汝の渇きを癒すが良いこの丘で
めぐみの雨をふらすが良い
低くしわがれる聖なる言葉で歌うがいい

アルペジオ潮のおと

魂を乗せて船出しよう 二人の脈搏は同じ
ように かくも早く夜は明けた
瀬戸内の海は静かな凪だ
胸の炎を隠して 夜明けの光を頼りに
やさしく やさしく運命のように
囁こう チェロの響きのように
遠い記憶の通路をぬけて 甘い言葉を
楡の木の下で二人の待ち遠しい
逢瀬のように

泥の船は激流の中を行く 憂いの多い人の世を
不透明な雲がおおってくる
嵐の前にこそ静かさはあるのだ
安らぎは少ししかない
我々は遥か彼方を行く 二人の造れる船が
家庭にある貧困と別離に飲まれながら

海はかすかな晩鐘のように 響くわだつみの中を

君の深い紫の面影が白い涙に消されないように
金色の鎖で君を縛ろう
潮騒の音が絶え間なく聴こえる
二人の出会いはアルペジオの潮の音

愛撫を約束するように
将来を約束するように
二人の意志はまっすぐな帆

世間から追われないうちに
契りの盃を三回吞みほそう

或る夜に

頭上で渦巻くツグミの金属性の鳴き声で目覚め
夜ごとミモザは水の中で花咲く
おお苦しみの暑さの中で

二人の影は光の果てに沈み 歓喜の中で蘇る
そして緑の夜をみずからの手で満たしたい
再びめぐり会えるように君の匂いや眼や声に

震える風の中で生温かい雫が落ちる
嘆きの歌が聴こえる

熟れた星に祈りを込めて二人酔いしれた
動物になって
深い咽喉に流れ込むように星一つ一つに
輝きに別れを告げて

朝がようやく生まれ初めてきた

小無限詩

寺院の塔のように凛々とそびえ立つ山々から風静か
なる湖水 昨日から微かに呼んだように
吹いてくる冷たい風
ただ朝日を再び新しく生み出すために果実の中の
果肉へ己の心を見るように
自分の心を探ってみる 幾度か思い返しては
踵をかえした至りに得ぬ夢を
風は死をみつめ 水面は生命を求めて揺らぐ
一緒にいたいのです
何か召し上がりますか
あなたの力になりたいのです
女というものはあるがままに受け取めるものです

駘蕩した夜に嚙み殺す喜びの嘆きが待っている
終りのない新しい復活の劇が待っている

夏競馬
 
さあ 行け 来い 来い
ああ
1-2 か 50;9倍か
俺が買った馬券は7の総流しだったのに
ため息つくのはどうも俺一人ではないらしい
あんなに時間を掛けて予想したのに
無駄だった
10レ−ス
あさがお賞 4歳 400万以下
夏競馬は荒れると聞いていたが
これで2万3千円の負けか
やっぱり競馬は勝てないゲームだなあ
まだ男と女のラブゲームの方が脈が
ありそうだ
馬がパドックを回っている時に
もう25%も負けているのだから
しょうがねぇなぁ

馬鹿の一つの馬が走るのだから
無理もないのだが
なんとなく見慣れた風景が憂うつに見える
これがギャンブルで負けた気持ち


外れ馬券は宙に舞い
競馬新聞はくずかごにたたきつけ
一人だれも待ってない部屋に
帰って
ため息をついた
希望と失望の交差する
スクランブルに人は大金を掛け
損しては又忘れ
又性懲りもなく

希望 と 刺激 とに
大金を掛ける


サルタン;モスク


イスラム寺院はガラッとしていた
私の心は旅の中でさすらっていた

神はいるのかなと思った
講堂のようにガラッとしていた


メッカの祈りは遠い希望
伏しての祈りは聖地につずく
砂漠は現実で
ここは精神のオアシス

神は何のためにいるのか
沈める寺は
今日ある命は明日にはない説く

遠い過去へ 近い将来へ 祈りの今へ


褐色の肌の異教徒は
私に素足で祈れと勧めた




@サルタン;モスク  1928年に完成した 
シンガポール最大規模のイスラム寺院

私のハートに火をつけて

私のハートに火をつけて
逃げてはダメョ 

会えない時が愛を育て
私たちの距離が少なくなる
時間と空間をつらぬいて

私のハートに火をつけて
私を青春の日々に追いやって
熱い火の中に私のハートを投げて
あなたの情熱の吐息を私にそそいで
あなたのハートを私でいっぱいにして

あなたのハートに触れていい
私の身体に触れて
私の髪の毛にも

トキメキ
タメライ
ハカナサ

今でも愛していると言って

私のハートを冷えさせて
あなたの眼から
幸福感を感じさせて
今が一番イイ時

あなたの冷えた身体で
投げキッス
私をあなたから遠ざけて
あなたの眼にキッス


私のハートに火をつけて
私の身体に火をつけて
私のハートを目覚めさせて

ナチュラリスト

南仏のエクスアンドプロバンス地方
では夏には肌を焼く
フランス人は女性の脇に体毛がある
ナチュラリストの所以である

雨は大粒な球形から
線的な雨に変わり
小雨になった

ハワイのような快楽的な
ところがここ南仏にはない


一般的には自然を愛する人が多い

浅草ロック

衣装は君の一部だ 衣装があるためになお君は美しい
孔雀の羽は拡大される 衣装があるために裸体はかがや
く 七色に輝くミラーボールのように一枚一枚捨てる
衣装に息を飲む

ルビーの可憐 サファイアの笑い ダイアモンドの富豪
君は背を向け 君の盛り上がった尻の肉片がゆれて 
人々は拍手する ロックのリズムで場内はゆれるビイトは
ビイトを生む レッドツェッペリン号が気流に乗る

表情は客を煽情し 乳房は立て看板のように誇示する
君の名前のように
オレンジ色のスポットライトが君を照らす時

辺りは静まりかえり
ビ−カ−に入っている硫酸のように
危険な状態になる

観客はカタツムリの触角を持つ
観客は二つの眼を持つ野獣に変貌する

君の陰部は蛭のように吸い付いた


地味で堅実的なところが
あるばかにりだ

      

夜明けに見る夢が一番美しい


意識は元気を取り戻し
疲れはいやされ
深いねむりの洞窟から明かりがもれるとき
美しい夢を見る
それは意識が天国に一番近い時

夜明けに見る夢が一番美しい
心は形を求めて夢見る
形は心掛けが大切と教える
男は世界を見てわれにきずく
女は鏡を見てわれの心にきざむ


私は世界を夢みるが
世界は自分を反映するは

夢を見ることが今日を決める

欲望の弓矢をたつ人はうめ
心は清いが融通がきかず

知恵の高欄に立つ人は
実践がともなわないのが常だ

とかくこの世は不満ばかりだ
今日だけは自分に満足して浪費はすまい
歯をみがくように貯蓄しよう

夜明けに見る夢が一番美しい
夜明けに見る夢が明日につながる時  

夢は現実となり叶えられる

微風

耳を澄ましてごらん
微かな風が季節を探している
見守っている
秋の空はほんとうに青く澄んでいる
東の方へ行く風が身体に心地良い

湿っぽい暑さがまだ残り 窓を開けで
涼を得ようとする時
通りの背の低い銀杏の葉は
風に震え 心細くそよいでいる
秋風たちよ ゆたかに取り囲んでくれ
微風は歌を待っている 約束した時間に
あえぐ額に汗が吹き付けてくる

夜の乾いた風が何かを告げようと急いで吹く
社会で摩擦するすべてのものに
砂たちが騒いで舞い上がる

こだましたその歌に
瞳はそのおかげで夜の中で目覚める

あなたと私はきっと歌を長く待っていた
二人には行方がわからなかったけれど
微風と一緒に共鳴する時
その歌のほんとうの意味がわかる時にちがいない

小さな町に歌が響く
きっと良い歌が微風に吹かれて

巴里

驕慢な貴婦人の首飾り
大陸の優雅な叙情

何もかも飲みつくす
猥雑なる娼婦

緋色の下着と黒いストッキングを衣装の下に
隠して誘う
巴里の娼婦

私はとまどい
君の美しさに見惚れて
立ち止まるだけ
雨がふる小さな路地裏に咲く
歴史の石畳に
ガス灯は憑かれた月の幻が

夜のシテに
霧雨は憂愁に煙り
夜曲が媚薬のように
肉の中にながれ
ヤギの目を使った大人の戯れは
むなしく
一抹の泡のように消えた欲望のようだ

ありとあらゆる芸術家が謡い描いたが
言い尽くせなかった個性
巴里よ
淫蕩なる巴里がまた私を呼んでいる
甘い言葉が私をよわす

偉大なる理性と
怪奇な感情が混ぜ合わさって出来た
大いなるシテよ
私はもう一度抱きしめに行きたい

久美へ

この出会いは私たちが探し求めでいた
全てであっで欲しい

君は私の魂が欲していた唯一の人であった

君は私に安らぎと勇気を与え
私は君に感謝するだろう

君と暮らしたならば
楽しみは二倍に苦しみは半分に減るだろう

君は楽園の緑の小島

君と美しい花

湧き出る泉に囲まれ
子供たちに恵まれたら

私はこの世の財宝をすべて
得た男よりなおいっそう
幸せだろう

我が愛車

それは一つの風
それは一つフォルム

それは一つの愛
それは一つ地平線

そしてそれは一つの私

古代ギリシャの風景

愛と美の女神アフロディーテの静物
地中海とエーゲ海の風
澄みきった高いスカイライン

エーゲから吹き出した美神びいなす
アテネの学堂ではエチカについて
議論する哲学者
女神アテナの知性と純血への賛美
パルテノン神殿こそ神性に近づく
人間の意志の記念碑
遺産のシンボルパルテノン
壮大な叙事詩パルテノン
音楽がこうりついたパルテノン
夜のエーゲに写し出された月
地中海の小島グレタに咲くアネモネの花
世界の彼岸にイデアを発見したプラトン
ソクラドアテネ 学へのしゅうぱつ
古い礼拝堂で美について語る哲学者

月桂冠に授かったオリンパスの競技者
大きなプラタナスの中で
小鳥たちのさえずり
官能と美と自然
静清と明晰なギリシャの幻影
エーゲの渚は
今日もムーンストーンのように碧い


25/09/19 16:29更新 / 平尾 直久

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法政大学卒

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