ポエム
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アルペジオ潮のおと
魂を乗せて船出しよう 二人の脈搏は同じ
ように かくも早く夜は明けた
瀬戸内の海は静かな凪だ
胸の炎を隠して 夜明けの光を頼りに
やさしく やさしく運命のように
囁こう チェロの響きのように
遠い記憶の通路をぬけて 甘い言葉を
楡の木の下で二人の待ち遠しい
逢瀬のように

泥の船は激流の中を行く 憂いの多い人の世を
不透明な雲がおおってくる
嵐の前にこそ静かさはあるのだ
安らぎは少ししかない
我々は遥か彼方を行く 二人の造れる船が
家庭にある貧困と別離に飲まれながら

海はかすかな晩鐘のように 響くわだつみの中を

君の深い紫の面影が白い涙に消されないように
金色の鎖で君を縛ろう
潮騒の音が絶え間なく聴こえる
二人の出会いはアルペジオの潮の音

愛撫を約束するように
将来を約束するように
二人の意志はまっすぐな帆

世間から追われないうちに
契りの盃を三回吞みほそう
25/01/17 16:55更新 / 平尾 直久



談話室

■作者メッセージ
山口県出身 法政大学卒

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