中庭に一輪の薔薇が咲いている
私以外の誰も気づかない
物陰でひっそりと咲いている

私だけがこの美しさを独占できる喜びと
私以外と美しさを共有したい気持ち
その狭間で揺れる心を
薔薇は嘲笑っているようだった

中庭の薔薇は今日も物陰で咲き誇る
段々と色褪せていくその姿も美しく
散りゆく花びらさえも愛おしい

中庭の一輪の薔薇は枯れてしまった
日のあまり差さない物陰で咲いていたから
植え替えれば今も美しく咲いていただろうけど
私の独占欲が勝ってしまった
いつまでも私だけのものになって欲しかった

季節が流れて様々な花が咲き乱れるが
私が美しいと思うのはただ一輪
記憶の中で咲き誇る物陰の薔薇だけ