風鈴
物干し竿に沢山の風鈴
真下の縁側に
くうとふうが腰かけています
おそろいの甚平を着た二人の間には
プリンとゼリーとわらび餅と麦茶
あまり鳴らない風鈴を
団扇であおいで
鳴らしているのはふうです
わらび餅かプリンか
どちらを先に食べようか
悩んでいるのはくうです
悩みながら
くうはふうに
小僧の話を聞かせます
風鈴を扇ぐ手を止めて
ゼリーを匙ですくいながら
ふうはくうの言葉を聴きます
どこか遠くで日が暮れますが
ここはいつまでも昼下がりです
そのうち二人は
幸せしりとりを始めます
幸せだったらいいなと願うことを
しりとりするのです
片方が「せかい」と言い
もう片方が「いのち」とつなげます
その次の言葉は
いっせいに鳴った風鈴の音で
聞こえず
同時に笑った二人の声を
風が空へ運びました