私より弱い花(修正)
駐車場の地面から
小さな花が咲いた
割れたアスファルトから、懸命に茎を伸ばし
少しでも、日の光を
少しでも、生きようと
こつこつ努力をし
それが報われて、開花した
黄色の花びらは
まるで無垢な子どものよう
とても可愛らしく、そして綺麗な
良い花だ
だから私は
その花を、思いきり踏んづけてやった
むしゃくしゃしていて
誰でもいいから、八つ当たりしたかった
いや、もっと言うなら
弱いモノをいじめたかった
どんなに懸命に咲こうとも
所詮は、ただの花
人間の私には、まるで敵わない
踏まれるがまま
されるがまま
その運命に、黙って従うだけ
だから踏んづけた
何度も踏んづけた
茎がぼきりと折れて
花が落ちた
良かった
自分の方が強かった
花は、私より弱い
一時の自己満足に浸りながら
ふう……と息を漏らして
花の死体に背を向け
家へ帰る
幾日か後
その花の死体は
完全に枯れた
花は綺麗だった
頑張り屋だった
可愛かった
そしてなにより
生きようとしていた
もう、その面影はない
おれは
おれは悪くない
弱かった、あの花が
あいつが悪い
おれに負ける、あいつが悪い
そうやって、自分を正当化しようとした
だが
だが
そんな気持ちに
なれる訳がなかった
ひょっとすると
自分は、本当の馬鹿野郎なんじゃないかと
その時思った
『おれの方が、踏まれるべきだったんだ』
そんな想いが、花の記憶とともに
私の胸に焼きついた