アホリンピック2020
「さー!今年もやって参りました!アホリンピック2020!実況は私“ボリビア 猿次郎”と、阿呆大学教授“光頭 ハゲ丸”さんです!光頭さん、よろしくお願いいたします!」
「どうも、光頭です」
「では、さっそく競技の方にうつりたいと思います!」
……アホリンピック2020……
13時47分、開幕
「えー今年はですね、参加国が四つと、なんと例年の四倍なんです!」
「今年はコロナウイルスもありましたから、みんな暇なんでしょうね」
「では、ひとつめの国から!アメリカ代表、ベン・ピーダー選手です!」
ベン・ピーダー選手、入場
「ベン選手、ソーシャルディスタンスを保ちながら、客席に手をふっています!余裕の笑みですね」
「格好は、メガネのおっさんといったところですな」
「おっと!?ベン選手、メガネを頭に乗せたぞ……!?何をする気だ?!」
「メ、メガネ、メガネはどこ……?」
「な、なーんと!?メガネを頭につけながらメガネを探す!メガネをかけている人なら一度はするアホな行為!ベン選手、初っぱなからかましてきました!!」
「さて、評価の方はいかに!?」
ぽーん
ベン選手、705000パラディソ
「なんと!705000パラディソとは意外!ちょっと低すぎではないでしょうか?」
「審査員に、メガネの方がいらっしゃいますからね。おそらく、反感を買ったのでしょう」
「うーん、厳しめの審査!アホリンピックは甘くない!」
「続いては、前回優勝者!ドイツのゲリシータ・ツーライ選手です!」
ゲリシータ選手、入場
「前回はなんと、参加しただけで優勝というとんでもない実績を持つゲリシータ選手!どんな演技を見せてくれるのか、楽しみです!」
「スーツを着てて、暑そうですね。アホポイント高いですよ」
「……つまり、ドーナツの穴というのは空間であり、ドーナツそのものではないことから、ドーナツを購入したとしてもドーナツの穴がついてくる訳ではなく、従ってドーナツの穴は……」
「ゲリシータ選手、何やら話をしているのですが、意味が全くわかりません!」
「なるほど、相手に分かりにくい話を延々とする。中々高度なアホっぷりですね」
ぽーん
ゲリシータ選手、ルート2パラディソ
「で、出ましたルート2!!さすが前回王者!余裕で平方根を出してきましたー!やはり他の選手とは各が違うのか!!」
「難易度の高い演技でしたからね。これは凡人には中々できない」
「さて続いては、フィリピンのポンポン・タイタイ選手!」
ポンポン選手、入場
「さあ、フィリピンからの参加は今年が初めてです!今までにない新鮮な演技を見せてくれるのか!?期待か高まります!」
「ていや!」
ばっ!!
「な!?なーんと!!ポンポン選手、マスクを脱いでしまったーー!!」
キャー!!
マスクを脱いだぞー!
ママ、コワーイ!
「客席からも悲鳴の嵐です!このコロナウイルスの時代、マスクを脱ぐという行為ほどアホなものもないでしょう!!初参加にて大暴走のフィリピン!」
「アホですねえ」
ぽーん
ポンポン選手、πパラディソ
「出ました円周率!!ポンポン選手、ここで円周率を叩き出すとは!予想以上の結果を見せてくれました!」
「ゲリシータ選手と並びましたね」
「ポンポン選手、警備員に連れ去られていきました!満足気な顔で手錠をされています!」
「さて、次で最後になります!我らが日本代表、腹痛 治(はらいた おさむ)選手ー!」
腹痛選手、入場
「さあ日本代表の腹痛選手!日本の期待をその双肩に乗せています!大和魂を見せてくれるのか!?」
…………………………
「……?腹痛選手、眼をつぶったまま、微動だにしません」
「む……?」
…………………………
「ただ立っているだけです!何の演技だと言うのでしょうか?」
「はっ!?そうか!」
「ひ、光頭さん、これは一体……?」
「あれこそ、アホの真髄です」
「なんですって!?」
…………………………
「見なさい。あの、ありのままの姿を。人間は生きているだけでアホであると、彼は言っているのです」
「な!?」
「ただそこにいるだけで、人間はアホになれる。存在そのものがアホである。それを、彼は証明してしまった」
「な、なんということでしょう!?究極のアホを体現してしまったというのですか!?」
ぽーん
腹痛選手、E=mc2パラディソ
「こ、これは!!?い、E=mc2が出てしまいました!なんたることでしょうか!?!」
「アインシュタインの相対性理論が生まれてしまいましたね。アホと天才は紙一重。腹痛選手は、それをここに証明した」
「まさしく伝説を生んでしまいました!!この演技は、これからのアホリンピックに燦々と輝くことでしょう!!」
優勝、腹痛 治選手……!!
わああああああ!!!
………………
「……それが、パパの優勝した時の話?」
「ああ、今も歓声が聴こえてくるよ。あの時ほどの充実は、もう味わえないような気がするな……」
「すごかったんだね」
「うむ。だから息子よ、お前も是非アホリンピックに出てごらん。きっとお前を、成長させてくれる」
「ううん、絶対ヤダ」
終わり