嫌いな人は、自分そっくり
ふと、疑問を抱いた
なぜおれは、あの人が嫌いなのだろうか?と
いや、正確には嫌いではない
その人自体は好きだし、友達でいたいと思っているのだが
その人の行動を見ていると
なんだか妙にイライラしてくる
その人は
他人に優しくしようとしているし
事実、困っている人を助けようとしている
おれもその人には、かなりお世話になったし
ありがたいと染々思っている
ならば
どうにも拭えない、この苛立ちは
いったいどこから来るのだろう?
目立って嫌いなところがある訳じゃないあの人は
なぜこうも、おれをムカつかせるのか?
だが確かに
あの人も欠点がない訳じゃない
どうやら、人からの優しさを信じられないらしい
人から助けられても、その時は助けられたフリをして相手をたてるらしいが
実際には、相手の優しさを心から信じられていないので
いつまでも孤独のままだ
そして、そんな自分の一面が
苦しいほどに嫌いらしい
だが、私にもそんな一面はあるから、共感はできるな
人からの優しさを信じられない
でも、人には不思議なほどに優しい
ああ
嫌われるのを恐れているのか
人に優しくすれば、少しは好かれる
それに幾分か、自分のことが好きになれるし
自分には愛があると信じられる
だが、人からの優しさを信じられないのに
一回は助けられたフリをするのは
相手に失望されたくないからだ
つまり、嫌われたくないから
そして、人の優しさを信じられないのも
相手がずっと自分を好きでいてくれるか自信がないから
『この人は、まだ私に優しくしてくれるだろうか?』と
びくびく怯えている状態なのだ
そっか、ここだ
ここにイライラするんだ
『何をびくびくしてんだよ!』と
胸を締め付けられるようにムカつくんだ
いや
待てよ
おれはさっき、この人の気持ちが共感できると言った
『人の優しさが信じられない』
ということは
おれも人から嫌われるのを恐れている面があり
嫌われたくない……とびくびくしているところが、あるってことか
そうか
おれは
おれの嫌いな面を持つあの人がいるせいで
自分を見ているような気にさせられるのが辛かったのか
自分の許せないところがあるせいで
あの人のことも許せない
じゃあ、逆に言えば
自分を許せば
相手を許せるのか
そうか
そうだったのか
嫌われたくない
そうだな、おれもだ
おれも嫌われたくない
あなたと同じだ
まずは、それを自覚しよう
そして、いつか
自分とあなたを
心から許せる日が来ることを
ゆっくり空でも見ながら
待つことにしよう