そりゃあ

嬉しくないって訳じゃないさ

優しくされるのがイヤな人間は、ほとんどいないだろう

というか、優しくされたい人間の方が多いもんな

おれだって、例外じゃない

たまに優しさが行き過ぎて、お節介な人もいたりするが

その心意義自体は、嬉しいものさ




だが、ふと

嬉しいと思うと同時に

ざわりと、胸の中で

少しイヤな焦燥感が生まれるんだ




これはいったい、なんだろう？

なんだか妙に落ち着かない、足がそわそわするような

あの不安感は



こう、上手く言葉にできないが

『またこの人は、優しくしてくれるだろうか？』

とか

『この優しさに、見合った人間でなければ』

みたいな

そんな気持ちが、ふいにやって来るんだ




と言うことはだ

ひょっとして、おれは

嫌われるのを恐れているのか？




同じように、優しくされなくなったらどうしよう……と

勝手な妄想をしているのか？

まだ何もしちゃいないし

全然、まだ予兆すらない未来の話じゃないか

全く

つくつぐ難儀な頭をしているな、おれは

今受け取った優しさだけ、見ればいいじゃないか

それを嬉しいと、まっすぐに思えばいいだけなのに


そうだ、嬉しいという思いを、相手に伝えなきゃ

ええと、どうだったかな？

ああ、そうだ



「ありがとう」