人を救おうと、しなくていい
ああ、なんてことだ
私は
あの人を救えなかった
分かっていたのに
胸が焦げるような苦しみを、味わっていたこと
風のように消えてしまいたいと、透明な涙を流していたこと
そんな想いをしながら、生きていたくないと
あの人が思っていたことぐらい
私は分かっていたはずなのに
最後に残ったのは
あの人の記憶だけ
切なげな顔ばかりが浮かんできて
笑顔がひとつも思い出せない
どうして、笑顔にしてやれなかったのだろう……
なぜ、あの人を支えられなかったのだろう……
私がもっと頑張れば、救えたかも知れないのに……
だが、しかし
本当にそうだろうか?
私は、あの人を本当に救えたろうか?
そもそも、救うとはなんだろう?
物理的に生命を助けることは、理解できる
しかし、人の心までは、救うことができるのだろうか?
どれだけ愛してると叫んでも
相手が信じなければ無意味
どれだけ優しさを与えても
相手が受け取らねば無意味
その人自身が、周りの人の愛を信じ
優しさに目を向けて
それに感謝できた時
初めて、その人は救われる
で、あれば
我々は、他者の心を救うことができないのなら
一体、どうしたらいいのだろう?
苦しんでいる人を、どう支えてやればいいのだろう?
ああ、そうか
救おうとしなくて、いいのか
苦しんでいる人を見つけたら
一心に、自分なりに愛するだけ
それがもし、相手に届かず
救えなかったとしても
それでいい
あの人が死を選んだのなら
あの人らしく死ねたことを
受け入れてやればいいのだ
無理に救おうと、しなくていい
ただ、自分の持てる愛を
惜しみ無く与えてやるだけでいい
『私は、あなたを愛している』と
自分の気持ちを、素直に言うだけでいい
それ以外はできない
でも、できなくてもいい