真夏の蜃気楼
夏になると、色が鮮やかになる
深く、濃く、それでいて清純
水彩画も顔負けの爽やかさが、夏になるとやってくる
私にとっては、もう22回目
だがいつになっても、夏の持つ美しさは変わらない
それゆえか
夏にはいつも、蜃気楼を見る
プールまで一緒に、あいつと走った道のりを通ると
今も、小さい頃のあいつと私が
その道を走っている
近くの森に行けば
あの日取った、一番大きなカブトムシが
まだ、どこかにいるような気がしてくる
だが
もう、あいつとプールへ行くことはないし
カブトムシも、もはや見当たらない
全てはただの蜃気楼
所詮、過ぎた思い出だ
しかし、それでも
ひょっとしたら、蜃気楼のようなことが
いつかまた起こってくれるのではないか?と
期待している自分もいる
夏が、あまりにも変わらないから
またあいつと、プールに行けて
カブトムシを取って
夏は暑いねと語りあえるような
いや、もちろん
そんなことはあり得ない
あり得ないのだが……
夏はいつも、変わらない