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子どもをやめる時
小さい子どもの内は

大人が絶対的な存在であった

言うことは全て正しく

言いつけられたことは、必ず守らねばならない

子どもたちは、いつも仰ぐように大人を見つめ

王から命令を下された家来たちのように、素直にそれに従っていた




だが、それは

思春期に入ると、ころりと変わる

大人の言葉に反発するようになるし、言いつけにも反抗してくる

それは、大人が必ずしも正しいとは限らないことを知るからだ

『人に優しくしなさい』と言う癖に

大人たちができていないじゃないか!

理不尽だ!

そう思うことで、大人への不信感を抱くようになる

絶対的だと思っていた分、その反動は大きい

そして、対立する

大人と、自分たち子どもとで

自分はあんな大人にはならない!と、生き方も反発していく



そうして

反発しながら生きていった先で

子どもたちは知る

この世の中、いかに生きることが難しいかを

自分の理想通りに事が運ぶなど、ほとんどあり得ないことを

理不尽が、この世の常であることを

自分がいかに、弱いかを

身をもって思い知らされる

そして

その経験をしたことで

彼らは悟る




大人たちも、自分と同じように

弱い人間のひとりに過ぎなかったのだと




誰もが例外なく

生きることに苦しみ

頭を抱え

もがいている

大人だとか、子どもだとか関係なく

どちらが偉いとかも、存在しない

対等なのだ



それを知った瞬間

子どもは、大人を許せる

自分の弱さを認めた時

相手の弱さも受け入れられる

そうして子どもたちは、『大人』と『子ども』という線引きをやめる

『子ども』でなくなる




あらためて

ひとりの『人間』として、生き始める



20/08/15 23:13更新 / すっとこどっこい



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