ポエム
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初恋は、透き通るようだった


十才の頃

私は、初めて恋をした



あの子は、同年代にしてはとても落ち着いていて

ふふ、と柔らかく笑う表情が

なんだか、体を包まれているような気にさせられて

不思議だった

そんな彼女を、私は好きだったし

よく話したりもした

そばにいるだけで、幸せだった

あの子の顔が、いつも頭に浮かんでいた



ある時

あの子は、自分の好きな男の子に告白したら

向こうも好きだと答えてくれたと

笑って私に教えてくれた




私は

彼女と同じくらい、喜んだ




彼女が嬉しそうに、珍しくはしゃいでいたので

私も一緒になってはしゃいだ

『良かったね!』と私が笑うと

彼女は『うん』と、照れくさそうに答えた

幸せそうなあの子の顔を見て

私も、幸せになれた




……卒業アルバムに写っているのは

屈託のない、あの子の笑み

それを見つめながら、私は想い返す

あの時の私は、相手の幸せを一番に願っていた

『自分だけ好きでいてほしい』だの、『あの子の一番でありたい』だの

そんなものはひとつもなく

ただ、相手のことだけを想っていた 



それは、透き通るように純粋な

愛に似た恋



あの頃はこんな気持ちでいれたのに

なぜ、今は難しいのか……?

私が大人になったからか……?

だが

それが大人になるということなら

私は、永遠に子どもでいたかった

……………………

私は静かに

そのアルバムを閉じた






20/08/15 07:12更新 / すっとこどっこい



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