ムーミン・トロールの親友

スナフキン

彼は、常に自由だ

好きな時に釣りをして

好きな時にハーモニカを吹き

好きな時に旅に出る

優しさと敬意を持って、人と接するが

必要以上には、人の心に踏み込まない

いつも少しだけ距離を置いて

孤独を好む、風来坊



ああ、なんと羨ましい

私も、スナフキンのように旅へ出てみたい

自由気ままに

何者にも縛られず

また、何者も縛ることなく

生きてみたい



だが

現実は、そう簡単にはいかない

もし私が、スナフキンのように旅に出てしまったら

残している仕事を、誰かが代わりにしないといけないし

自営業をやっている家族にも、迷惑をかける

そして私自身が、旅することを恐れている

月曜日から日曜日までが

ある程度のサイクルで決められている、この日常に

私はすっかり慣れきってしまって

明日どうなるか分からないという旅は

もう、怖いと思うようになってしまった

こんな状態じゃ、スナフキンのような生き方なんて

到底叶いっこない



だが

逆に言えば

スナフキンは、私のようには生きられないはずだ

家族や仕事仲間と、せっせとルーチンワークをこなし

その中で、小さな幸せを見つけた時の喜びは

おそらく、スナフキンは知らない

そうさ

自由を求めて歩く彼とは

違う生き方しかできないが

私は、私の生き方に誇りを持とうではないか




私は、スナフキンにはなれない

スナフキンも、私にはなれない

だが、それでいい



たまに河川敷きで

彼を真似て、ハーモニカを吹いて

友達から『下手くそめ』とからかわれるくらいで

ちょうどいい