真面目な天使とのんびり神様
神よ!神よ!
ご覧ください!
人間たちが、また争いを始めました!
おお、本当だな
憎しみ、怒り、嫉妬、恐怖……
様々な感情が、混沌として渦巻いておる
うむうむ、関心関心
神よ、関心している場合ではありません!
ああ、人間たちが、互いに互いを傷つけあっていく……
なんとかして、救わねば!
ふむ?救うとな?
天使よ、お前は何かするつもりなのかね?
私は人間界に降り立ち、人々に愛を説きたい!
今の人間たちは、みな愛に対して不器用です
上手く愛することができないし、愛を受けとることも怖がっている
だから彼らに、もっと器用になってもらうのです!
そうすれば、もっと平和で、もっとみんなが幸せになれるはず
私が、人間たちを変えてみせます!
ほう、人間たちを変えると?
天使よ、お前は人間を愛しているのか?
もちろんです、神よ
心から愛しております
だからこそ、変わってほしい
そうか
私はお前が何をしようと、止めるつもりはさらさらない
だが、ひとつ気になることがある
お前は、混沌とした世界は愛していないのか?
混沌を?
しかし神よ、混沌の世界は荒んでいます
互いを傷つけあうのは、誰も望んではいないはず
私はね、天使よ
お前の望む、愛に満ちた世界も、もちろん愛している
だが、この混沌とした世界も、同じように愛しているのだ
バカな!?
傷つけあう世界を愛していると?
それは一体、なぜですか!?
それはな
混沌こそが、人間そのものだからだよ
美しく綺麗なものも、醜く汚れているものも、全てが人間ならではのものではないか
私は、人間そのものを愛しておる
綺麗な愛も、汚れた憎しみも
その全てを、受け入れているのだ
では、神よ
あなたは人間同士が傷つけあうのを、黙って見ていられると?
傷つけあうことが、悪いことだと言いたいのかね?
しかし天使よ
誰がそんなことを決めたのかね?
傷つけあうこと
結構じゃないか
それを経験したことで、愛を目指すきっかけをつくってくれるやも知れぬ
しかし、目指さぬ者の場合は?
それならそれでよい
なぜですか神よ!?
なぜ愛の道へ向かわせないのですか!
天使よ
愛だけが、高尚な感情だと思ってはおらぬか?
悲しみも喜びも、嫌悪も怒りも
全てが等しく、大事な感情ではないか
私にとって、なにもかもが等しく、愛しい存在なのだ
優劣はない
………………
目の前に存在するもの
それは、私の愛の対象なのだ
理由などない
存在すること、ただそれだけでいい
……私には
まだ分かりません、神よ
それならそれでよい
自由に迷えばよい
さて、どうだ?
そろそろ茶でも飲まんかね?
人間界を見守りながら、ゆっくりとくつろごう