愛を信じられない、無様な男の話
男は
延々、裏切られ続けた
肉親から
親友から
恋人から
少しの配慮もなく
少しの慈悲もなく
裏切られ続けた
彼の優しさは利用され
嘲笑され
馬鹿にされ
踏みにじられた
すると男は
愛することを止めた
そして、愛されることを信じなくなった
道行く人全てが、敵に思えた
彼の味方は、一人もいなかった
そんな彼に
手を差し伸べられる人が
一人だけ現れた
男は拒絶した
だが、それでもその人は
彼を心から愛そうとした
男は叫ぶ
『おれは、愛を信じない!』
そして、男は
その人を殺した
差し出された慈悲の手を
慈愛に満ちた、その顔を
血で真っ赤に染めた
男は
安堵した顔をして
静かに死体を見つめていた