子どもの頃、好きだった映画

それを見返すと

当時のワクワクが、鮮明に思い出されて

とても嬉しくなる

そうそう、こんなシーンがあったな

この場面、昔はよく分からなかったが、今は理解できるぞ

うんうん、いつ観ても面白い

そんな気持ちに、浸れることができる



だが

ふと、気がつくことがある

頭の片隅に覚えていた、あのシーン

あれが、どこにもないのだ

なぜ？

おかしい

確かにあったはずなのだが……

しかし、どんなに探しても

それは見当たらない

子どもの頃の記憶なんて、曖昧であるということは

知識では分かっていたが

まさにそれを実感すると

どうにも

寂しい気持ちにかられた

まるで子ども時代が

共に消えてしまったかのように……



そして私は

その無かったシーンのことも

次第に忘れていった

どんな記憶だったか

どんなシーンを覚えていたのか

最早、思い出すことはできない

それを感じた時

ああ、もう大人になったんだな

なんてことを

独りぼんやりと、考えるのだった