おれを『良い人』と呼ぶな!
いい加減にしてくれ!
おれを、『良い人』だなんて呼ばないでくれ!
それを言われる度に
おれはゆっくりと、殺されているような気分になるんだ!
もちろん
最初の内は、おれだって嬉しいんだ
『良い人だね』と言われて、微笑まれるのは
もっと良いことをしたくなる気持ちに、かられるんだ
だが、次第に
みんながおれを『良い人』だと認識し始めると
とたんに事態が狂い出す
みんなが、おれを『良い人』であることが、当たり前と錯覚しだす
おれの優しさが、普通のことだと思い始める
身を削ってしている思いやりを、軽んじ出す
そうなると、もし少しでも冷たい態度をとったら、『良い人じゃなくなった』とレッテルを張られる
おれはそれがイヤだから、『良い人』の印象を崩さないように、良いことをしようとする
そして、支配される
『良い人』という枠組みの中に
気がつけば、他人のために生きているだけ
しかも、どんなに優しくしたところで、感謝のひとつもされなくなっていくというオマケつき
なんだ、これは?
なんでおれが、そんなつまらん支配を受けねばならんのだ!?
なぜ、『ありがとう』の一言すら消えていくのだ!?
ふざけるな!
『良い人』、『良い人』と、舐めた口聞きやがって!
その単語を聴くと、首が絞まっていく!
自分がすり減っていく!
おれが、少しずつ死んでいく!
もう、絶対に許さん
次、おれに『良い人』と言ってみろ
その鼻先がひん曲がるまで、ぶん殴ってやる