【3:11の詩】どんな風に生きたっていいんだ
あの日、私は小学校六年生だった
何もかもがパニックで
恐ろしくて
不気味だった
教室の天井にある蛍光灯が、左右にぐわんぐわんと揺れる
遠くで津波の音がする
電気のつかない真っ暗な本当の夜が訪れる
そんな異常事態の中
私は、人間の本性を二回見た
最初は定食屋
ここぞとばかりに、ご飯と味噌汁だけで1000円
みな空腹で困っている中で、足元を見る商売
己だけが助かればよいというエゴイズム
人間の本性
次は、三人の子連れ家族
空腹で泣いていたオレに、メロンパンをくれた
彼らもお腹を空かせて、震えていたはずなのに
おのが身を切ってでも、他者へ与えようとする心
人間の本性
私には
どちらが正しいかと、裁く権利はない
どちらの気持ちも、共感できるからだ
そして、どちらの選択にも覚悟が必要だからだ
定食屋は、周りからの非難を覚悟しなければならない
子連れ家族は、己が空腹で死ぬ覚悟をしなければならない
そう
そうだ
どう生きたっていい
覚悟があれば
それ相応の覚悟があれば
好きなように生きるべきなのだ
道徳だの、倫理だの
そんなものは不用
それは守らなくていい
守るべきは気持ち
己がもっとも後悔せぬ生き方に
それのみに集中すること
さて、私は
定食を1000円で売るか
メロンパンを無償であげるか
どちらにしようか迷っている