死にゆくお客様
昨日
ウチのお得意様から、連絡が来た
「解約をしたい」
先日まで今後ともよろしくと言っていたのに、一体どんな心境の変化なのか?
「どうされました?」
そう訊いてみた
「医者から、あと一ヶ月だと言われた」
彼はこう答えた
「そうですか」
私は他に答えようがなかったため、一言だけそう告げた
解約手続きを済ませて、対応は終了した
私にとって、彼は単なるお客様
優しい言葉をかける義務も、泣いてあげる理由もない
ただ……
あの人は、独りぼっちだった
子供もおらず、妻もおらず
もしかしたら、死ぬ間際も独りなのだろうか……?と思った時
『この一瞬だけでも、あの人が独りぼっちでないように』と
心の中で手を合わせた