銀杏のおばあちゃん
とある公園のベンチで
一人ぽつんと、老婆が座っていた
背中を丸めて
じっと、手元を見ている
あったのは、銀杏の葉
辺りに銀杏の樹は見当たらないから、おそらくどこからか拾ってきたのだろう
だんだんと日が落ちてきて肌寒くなってきているのに、老婆はそこからいっこうに動こうとしない
なあ、おばあちゃん
あんたそんなに、銀杏が好きかい?
まあ、そこまで嬉しそうな顔をしてるってことは
きっとそういうことなんだろう?
うん
そうだな
綺麗だな、その葉
まあなんだ
あんたがどんな人生だったかとか
どんな人間だとかは、俺はひとつも知らねえよ
だけど
今、あんたが幸せなんだろうなってことだけは
俺にも分かったよ
また、来年もおばあちゃんが
銀杏の葉を、見れたらいいな