自然を支配するなどと
おれたちは
自然を、すっかり知ったつもりに
すっかり支配したつもりになっている
風とは、こういうもの
雨とは、こんなもの
自然とは、このくらいのもの
ああ、なんとも
愚かであったことか
風に乗ったペットボトルが
ガラスを粉々に砕く
数トンはあるトラックが
軽々と横転する
電気は完全に止まり
水道も出なくなる
そんな風と雨が
今からやって来る
おれたちは
この、風と雨の前には
車ひとつ出せやしない
ただ、自宅に閉じ籠り
窓ガラスを補強し
物を片付け
水を貯め
後は、部屋でやつが来るのを
震えて待つしかない
なんと無様なことか
なんと弱々しいことか
自然を支配するなどと
傲慢であった
支配されていたのは
おれたちだ