ポエム
[TOP]
月に無常
僕が今生きているのは
沢山の人のおかげだと知った

その人々は皆
天に昇ってしまったと知った

いずれ僕も
沢山のうちの一人になると考えたら

無性に 死 が怖くて

無性に 時 が怖かった

まだ幼い僕は 青い僕は
逃げ出した 走り出したんだ

いくら吸っても空気が足りなくて
嫌になって空を見上げた

祇園精舎の鐘の声は

ここにはきっと届かない

沙羅蒼樹の花の色も

闇夜に消えて見えやしない

盛者必衰なんてものが無いことは
あの月が示していた

僕が生まれるよりもずっと昔から

ゆらゆらと僕を見ていた

孤独を殺すために叫んだこの言葉も

あいつにだけは聞こえてたかな
23/08/05 02:51更新 / 白詩



談話室



■作者メッセージ
早くに亡くした親父は
既に星になったらしい

無性に死が怖くて
認めたくなかった

まだ心の中には、小さい頃のままの
暖かな闇があった

TOP | 感想 | メール登録


まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.35c