拝啓，お母さん


私は貴女が嫌いです。
他の何よりも，誰よりも，嫌いです。

私よりもあの人が好きな貴女が嫌い。
私の話を何も聞かない貴女が嫌い。
私に嘘ばかり吐く貴女が嫌い。
私に暴という字の付く悉くを浴びせる貴女が嫌い。
私を生んだことを後悔している貴女が嫌い。
私の事が嫌いな貴女が嫌い。

でも私は，貴女が居ないと生きていけない。

貴女が私を生んで，貴女が私を育てた。

私は，貴女で出来ている。
頭の中から髪の先まで。
でも，貴女の中に私はどれくらいあるだろうか。

私は，貴女が居ないと生きていけない。

私，私は，失敗作でした。
ごめんね。
貴女が言っている事は，いつも正しい。

こんな私で，ごめんなさい。
生まれて来てしまって，ごめんなさい。
貴女の事を傷付けてばかりで，ごめんなさい。
私が私で，私以外の何物でもなくて，私で在ることしかできなくて，ごめんなさい。

お母さん。

私は貴女の事が大嫌い。
貴女もそうでしょう？

お母さん。

私を一番にしない貴女が大好き。
私に美しい事を何も言わない貴女が大好き。
私の全てを否定してくれる貴女が大好き。
私に輪郭を与えてくれる貴女が大好き。
私の生を肯定しない貴女が大好き。
私を好きにならない貴女が大好き。

何年も何年も何年も何年も。
こんな私と一緒に居てくれて，ありがとう。

貴女は私の全て。

ずっとずっとずっとずっと。

私は貴女が，大好きです。

■作者メッセージ
今日は母の日でしたね。

私は母がお気に入りのグミと，髪留めと，手紙を渡しました。
喜んでもらえただろうか。不快な気持ちになっていないだろうか。もっと，私の事が嫌いになっていたらどうしようか。
不安でいっぱいです。
何をしたら喜んでもらえて，少しでもこっちを向いてくれるでしょうか。

皆さんは母の日に何をしますか？