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その男(ひと)
その男(ひと)を何と呼ぶのがふさわしいのだろう
彼、と呼ぶほど近しくなく
あの人、と呼ぶほど遠くもなく
その人、と呼ぶほどの関係性もない男(ひと)

ついこの前まで、軽口をたたき、屈託なく笑いあったりして
普通だったのに、、、

プライド高く 傷つきやすい
ガラスのハートの持ち主で
自分を守ってくれる人や
自分を傷つけない人
そんな人々に囲まれた安全地帯に生きている

そこから 一歩踏み出すのは
どんなに おそろしかろう
つま先に 蟻地獄の砂の渦を感じて
一歩も前には進めないだろう

それでも
その男(ひと)は
未知なるものに惹かれるのだろうか
あるいは
恐れをなして それを遠ざけるのだろうか

シャットアウトするのは
私という対象ではない
自分の中に まだ存在するかどうかわからない気持ち
生まれたばかりの 朝露のような
みずみずしい感情
それらを
きっぱりと 封じ込めて
これまでの日常を生き続けていくのだろうか

いや
ひょっとして
蟻地獄の先の先まで
その果てに何があるのかを すでに知っていて
どこにも踏み出す気がないのかもしれない

そうだ
終わりが来れば
また ありふれた日常たちがやってくる
そんなリアルを
その男(ひと)はすでに知っているのかもしれなかった





20/01/01 14:41更新 / 姫沙羅



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