ポエム
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とある妄想
君が初めてボクの会に来たとき
ボクはなぜかどぎまぎした

古色蒼然としたこの楽器の
何処に惹かれて
この会に来たのだろうか

演奏のあと
関心を持った他の人々とともに
熱心に話を聞いて帰っていった

老人ばかりのこの催しに
君のような若い人は
滅多に来ない
たとえ来たとしても
この楽器を習うことはない
でも ボクは
密かに期待した

数日して 連絡があり
君はボクの弟子のひとりになった
独身に見えたが
聞けば小さい子どもがいるという

君は素直な弟子だった
ボクの教えを一言も逃すまいと
一生懸命聞く姿は
自分のかつての姿と重なる

そして
あっという間に上達した

楽曲のなかには
艶っぽい曲もある
そんなとき
ボクは少しイライラする

君が奏でる音楽が
君の楚々とした雰囲気を壊すからだ
いや 違う
君の白い指先が艶かしくて
ボクに妄想を抱かせるから

雑念を振り払うかのごとく
ボクは さらに君を厳しく指導する

そんなこと 何も知らない君は
自分の練習が足りないから
叱られているように感じて
さらに一生懸命 精進する

技術なんて どうでもいい
この古めかしい楽器を
まるで それを弾くために生まれてきたかのような君は
さながら
中国の古い挿絵に描かれた天女だ

白くてたおやかな身体
細くしなやかな指先
聴くものの胸に沁み入る麗しい声

君は いったい
ボクを何処へ連れていこうとしているのだ

20/03/02 15:11更新 / 姫沙羅



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