ポエム
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男と女の間には、、、渡りきれない川が、、、
その日も 男は
のんべんだらりと
日常を送るはずだった

毎日同じ時刻に家を出て
ほぼ同じ時刻に家に帰る
行きと帰りの道も 同じ
仕事も同様だ

可もなく不可もなく
平穏で 目新しいことなど
何もない

彼女から告白されるまでは

年の離れた彼女に
はっきりとした恋愛感情を抱いていたわけではない
ただ 面白い話をして笑わせたりするのは
楽しかったが それが恋とは気づかなかった
恋やら愛やら、そんなことに疎い人間だった
まして、人生とは、生きるとは、、、など
深く考えたこともなかったのだ
彼女と恋仲になるまでは

男の毎日のすべてが変わっていった
彼女が 男の世界の中心となった
自分のことを
唯一無二の存在、と言ってくれて
自分の仕事のことを
大切な意義のある仕事だと言ってくれた
何をおいても 自分のことを第一に考えてくれて
つくしてくれる、、、
そんな彼女が
かわいくて、いとおしくて
のめり込んでいった

誰にもとられたくない
他の男の邪な視線が耐えられない
誰からも見られないように
いつも自分のそばにおいて
自分の自由にしたい
そんな衝動が 男を突き動かす

彼女の話は 時に難しく
年長の自分にもよくわからない
そんなとき 男は彼女を自分の次元にまで
引きずり降ろそうと やっきになる

しかし
どんなに彼女を抱いても
彼女の中の 崇高な部分まで
支配することはできなかった
彼女はまだ
何もしらないのだった

そして いよいよ
力尽きるときがくる
男は思う
このままでは自分がダメになる
ありとあらゆることが
彼女を中心にまわり
精神のすべてを
彼女の心を繋ぎ止めることのために
使い果たし、疲弊した

そうだ、別れるしかない

気持ちの整理などつくはずもなく
心臓をもぎ取られた人のように
空っぽのこころで
ドクドクと 血の涙を流しながら
去っていく

彼女が泣いたかどうか わからない

彼女は
きっと もっと 器の大きい男に
守られるべきなんだ、と
男は 自分に言いわけした


20/02/22 01:05更新 / 姫沙羅



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