ポエム
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◯ちゃん焼き
それは遠い昔のお話です

彼には得意料理がありました

玉子を割って適当にかき混ぜて
味付けは塩コショウのみでシンプルに
油を敷いたフライパンに
それをザザッと流し入れ
ターナーで潰す潰すひたすら潰す

それを皿に盛り付けて
仕上げにたっぷりマヨネーズ

そんな不思議なぐちゃぐちゃ料理に
自分の名前を引用し
◯ちゃん焼きと名をつけた彼

喰ってみろと差し出され
食べたら味が凄く濃い

でもこれがまた不思議なことに
あと引く味で止まらない

私が綺麗に食べきると
彼はニコッと喜んだ
そして不思議な◯ちゃん焼きを
その後も時々作ってくれた

はからずもインフルエンザで寝込んだ時
風邪の熱で食欲がなかった時

栄養つけろの言葉とともに
作ってくれた◯ちゃん焼き

あっさりしたものが欲しい時に
正直言って受け付けない
だけど断るのも何だから
無理やり食べた頑張った

…そしたら何と言うことでしょう
なぜかすぐに元気になった

あれから気づけば20年…
時の流れはホントに早い
嫌なことはいろいろあった
だけどそれは気がつけば
時間とともに浄化され
僅かにあったいいことだけが
私の心に浮かんで消える

不思議に美味しい◯ちゃん焼きの
遠い遠い確かな思い出




25/11/15 14:16更新 / 志月

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