ポエム
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風の盆
お盆が近づくと
街の空気がなんとなく
しめやかになってくる

お盆の最中には
地獄の釜の蓋が開くとか
きちんと供養しないと
先祖が救われないとか言うけど

そもそも天国も地獄もなく
地獄の釜もないから開く蓋もなく
故人は以前と変わらず
同じ世界で暮らしているという

ただ見えないだけ
生きてる人とは話せないだけ

でも以前と変わらぬ生活をして
行きたい場所へは瞬間移動ができるらしい

それがもし本当だとしたら
去年他界した父なんか
生前からじっとしてない人だったから
きっと今頃瞬間移動をフルに使って
あちこち飛び回っているに違いない

念は故人に届くというので
小心者の私はいつも
「怖がらせないでね」と父に念じている

同じ見ていてくれるなら
わからぬようにそっと見ていてほしいのだ

数十年前に「みんなのうた」で
「風の盆」という歌があった
厳かでしっとりとした歌だった

そんな風の盆の全ての歌詞は 
もう覚えていないけど

それでも今年もお盆はやってくる

お盆には
静かにそっと手を合わせよう




25/08/11 09:15更新 / 志月

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