ポエム
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思い出の詩
私が学生時代を過ごしたのは

生まれ故郷ではない田舎の街だった

人々は純真で汚れがなくて

その分、垣根を持たなかった

そんな土地柄に慣れた頃

私にも複数の友達ができた

中には口の軽い人たちもいたが

どうやら悪気はなさそうで

知っていることをそのまま喋る

それがこの町では普通なのだと悟った

ここに住むと幼い頃から教わってきた

常識観念がじわじわと破壊されていく

母はそれが嫌だと頑なに言ったが

私は慣れるしかないと思った

あの頃はちょうど多感な時期でもあった

友はみんな恋に焦がれて

私も遅れを取ってはいけない気がした

でも昔から恋に疎かった私は

ついて行けずに完全に出遅れていた

そもそも淡い恋心さえも

いだける相手はそうそういない

それに学生なんだから

そんなことは本分ではなかったはずだ

今だからこそそう言えるけど

その頃は少し寂しかった

学園祭では同学年同士で

フォークダンスなんかも踊らされた

放課後には気になる人が下校するのを

窓の奥からそっと目で追った

…そうか、そう言われてみれば

私も少しは恋をしていたのかも知れない

ただそれが実らなかっただけ

今になってそれに気づいた

卒業と共にみんなは散り散りになったが

その後、誰しも里心がつくらしく

ただの友達だった異性から

離れて初めて恋心に気づいたからと

付き合わないかと言われたが

繋がるものは繋がるし

そうでないものはそこで終わる

そんな遠い日のあの頃の話

友と過ごした思い出の詩

夕暮れ時の街並みの

あの緩やかな風情にも似た

懐かしく友を想う遠いあの日の

どこかくすぐったい思い出の詩


25/06/05 17:38更新 / 志月



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