ポエム
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静かなる絶望
人の記憶は曖昧なもの

私がその人を覚えていても
その人は私のことを
きれいさっぱり忘れていたり

もう何年も前のことと
つい最近起こったことが
記憶の中でごちゃ混ぜになって
新たなストーリーに作り替えられていたり

そしてそういう人に限って
自分の記憶には確固たる自信があって
私が間違いを指摘しようものなら
あからさまにムッとした顔をして
ご機嫌斜めになってしまう

これはもしかしたら
現代人に課せられた
ひとつの試練なのだろうか

同じ人間同士なのに
同じ人種で同じ言語を話すのに
意思の疎通が難しく
わかり合えない人たちが
今の世の中あまりにも多すぎる

私の父もそうだった
お隣さんもたぶん父と同じ
それ以外のご近所さんも
みんな話が通じない

昔からみんなこうだったのだろうか

いや違う
昔は今より少なかったはずだ

いろんなことが進歩し進化した現代にあって
老いも若きも意思の疎通が円滑に行かなくなるという
新たな難題が拡大しつつあるこの世の中

この先医学は進歩するかも知れないが
これはそれ以前の問題のような気がする

意思の疎通が困難になる時代が
やってくるなんて夢にも思わなかった

こんな絶望的な世の中が来るなんて
想像もしなかった

世の中が進歩するのと反比例して
恐らく人はどんどん退化している


25/03/08 20:15更新 / 志月



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