ポエム
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ささやかな記憶
遠い昔のいにしえの時

違う私を生きていた

その頃の記憶がふと蘇る

そんなことが一度だけあった

あれはまだ10代前半の頃

文化祭か何かの時に

どこかの教室の大きな姿見の前で

カツラをとって衣装を脱いで

ぺたんと床に座りながら

腰まであった長い髪をとかしたその時

一瞬脳裏に浮かんだのは

生まれ変わる前の自分の姿

鏡に映ったその時の自分は

自分なのに自分ではなくて

ほんの一瞬別次元にいた気がした

あれはきっと前世の自分を垣間見たのかなと

そう思ったので家に帰って母に話した

母は大した気にもとめず

ただ「ふーん」とだけ言っていたような気がする

その日のことはそれ以来

ずーっと何年も忘れていたが

つい最近急に記憶が呼び戻されて

不思議だったなと今でも思う

たとえばあれが気のせいではなくて

前世の自分を垣間見たのだとしたら

それが一体何になるだろう?

たった一瞬見えただけで

何の得になるだろう?

どんな人生を歩んだのか

幸せに生きた一生だったのか

それは全くわからない

ただ魂が長きにわたり

受け継がれていくことが

わかった気がして心が和んだ

これはただそれだけの

ほんのささやかな記憶でしかない











25/01/08 19:39更新 / 志月



談話室

■作者メッセージ
ずーっと忘れていましたが
最近になって急に思い出したんです…。

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